坂田 信弘さん プロゴルファー

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2002年11月-月刊:介護ジャーナル掲載より(当時55歳)

人生もゴルフも理論から実践へ!

プロゴルファーの坂田信弘さんといえばご自身の活躍に加え、世界に通じるトッププロ、トップアマ育成の『坂田ジュニア塾』の温かくも厳しい塾長として、またコミック『風の大地』の原作をも含めた多彩な執筆活動で知られるなど、常に質の高いマルチな活動を続ける“実践”の人だ。
シンプルで具体的な“坂田理論”は多くのビデオや本となり国内外で人気を博している、まさに悩めるゴルファーたちの救世主的存在である。

◎360度の視点で子どもを見つめて

坂田信弘プロが『坂田ジュニア塾』を開くきっかけとなったのは、生まれ故郷・熊本での講演の時に出た「世界に通用するプロゴルファーを育ててほしい」という声に応えてのことだった。
坂田プロ自身の心の奥にも、欧米に比べて著しく劣っているゴルフ環境を想い、世界に通じるプロゴルファーの必要性を強く感じていたという。
放送局と電通、そして地元財界人がこれに賛同し、平成5年に熊本で開塾。
翌年には親友の遺言「北海道からプロを」という思いを叶えて北海道校が開塾。以後、全国7カ所で開かれ、今や小学3年生から高校3年生まで350人の大所帯だ。
塾生はゴルフ道具、練習ボール代とコースでのラウンドフィーすべてが無料。
それらは各地域の練習場やゴルフ場、クラブメーカー協賛を受けての無償協力で、塾生が国内大会に出場する時の航空運賃は坂田プロ負担であるという。
また、坂田プロは塾生に月一度の指導を行い、そのほかの時は塾地元のアマゴルファーがボランティア態勢で塾生指導にあたっているが、このコーチ連の協力がなかったら坂田塾の開塾は極めて困難だったろうと坂田プロ。
コーチ連、練習場、ゴルフ場、クラブメーカー、地元財界人、そしてゴルフ連盟の6つの支え樹で坂田塾は運営されていた。
これは「塾生の親の経済的負担を少なくすることで、ジュニアからの英才教育を為してみたい」という坂田プロの思いがあってのことだ。
シンプルで実践に優れた“坂田理論”はこの英才塾でも真価を発揮する。
「例えば登山道のない山に登るとしたら、まず山をいろんな方向から眺めて一番登りやすい道を探り、そこから歩き出しますよね。それと同じように、人間の性格や生きざまを360度の目線でまず眺め、一番適した方法を見つけて練習させていけばいいのです」。
この坂田理論の有効性を示すエピソードがある。
成績が100を切れない大人11人を、坂田プロが1カ月に1日、ほかの週はお弟子さんが教えた。
すると11カ月後には、全員がシングルの成績に。上達したい人が坂田プロの本に救いを求めるのも無理もない。

◎体・技・心—まず体を鍛えること

「子どもより大人の方が筋肉・経験・知恵など、体・技・心のすべてにおいて勝っています。
体力の衰えは技が克服し、技の衰えは心が克服します。
そして心の衰えは体・技・心すべてで克服するのです」と坂田プロ。
だから、スポーツをするにはまず体を鍛えることだと強調する。
いくら心の状態が良くてもゴルフはうまくなれない。
世にいう「心・技・体」ではなくあくまで「体・技・心」なのだ。「上達しないのは理論が間違っているか、練習の質がおかしいのです。
練習したものは経験・知恵・知識になっていきますから、大人は子どもの半分の練習量でうまくなれるはずなのです」。
それにしてもゴルフにはヘタの横好きが多すぎるのでは?という問いに対し、「大人の悪いところは結果を追い求めすぎることです。
プロは無意識のうちにスウィングしますが、アマチュアは結果を思い浮かべながらスウィングするので、その段階でプレッシャーに負けてしまうのです。
結果はアドレスしてからフィニッシュまで振り抜き、その後のもの。それなのに自分の今やっていることと結果を一体化させようとするから難しくなるんですよ。
“後は風にまかせる”ぐらいの感じでいくと楽なんですがね」。

◎上達の秘訣は愚直な心と鈍感な感性

子どもはあれこれ思いわずらうことなく、ひたすら練習する。無欲の球叩きであり球遊び。
だから楽しい。素朴に、“今”のために練習する行為こそが自分の身につく結果だと坂田プロはいう。
「いい意味で愚直な心と鈍感な感性を持ち続けること—これこそがゴルフ上達に一番必要なことです。
競技スポーツである限りプロを目指すのは当然ですし、子どもたちには高い目標を持ってほしいです。
そして私が子どもに与えているのはゴルフ環境と6番アイアン1本の指導だけで、後は世間が教えてくれてます」。
坂田プロの言葉を反芻しながら、ゴルフについての話はその実、人生における大切なうんちくだと気づいた。
「世界のトッププロ、トップアマを目指すために始めた坂田塾ですが、よくここまで来れたと思っています。要は不安を感じない練習手段を見つけることの一語に尽きます。不安を感じ続けての練習では不安が不安を生み、息苦しくなっていくばかりでしょう。悩んで練習するよりは悩まないで練習する方が上達の途は早い。勢いで上達できる時って誰にでもあります。その勢いを作るのが理論です」と微笑む坂田プロ。
これからも頂上を目指す子どもたちを励まし続けるに違いない。