関根 潤三さん 野球解説者、元プロ野球監督

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2001年05月-月刊:介護ジャーナル掲載より(当時74歳)

「野球が好き、人間が好き」

現役選手、さらにコーチや監督として一世を風靡し、現在は「プロ野球ニュース」の名解説者としてお茶の間にもお馴染みの関根さん。
偶然ともいえる不思議な縁でプロ野球界に入り、野球とともに人生を歩んできた、この無欲で慈愛にあふれた“野球界の親父さん”に育てられた選手も数多い。
人間関係が希薄になりつつある現在、いつも前向きで、厳しい中にも楽しく明るく野球を続けてきた関根さんに学ぶものは大きい。

◎素晴らしい出会いが人生の転機に

自分は恵まれた人生を送ってこられた、と何のけれんもなく淡々と口にできる人が果たしてどれだけいるだろうか。
目の前で静かな微笑をたたえて語る関根さんは、そうした数少ない“豊潤”な年月を刻んでこられた、人生の達人のひとりである。
「私の場合、両親がたまたまスポーツに適した体に私を生んでくれ、たまたまスポーツが盛んな学校に行き、節目節目によい指導者や人物に偶然巡り合えたということで、非常にラッキーな野球生活を送って現在に至っていることを感謝しています」。
最初の運命的な出会いは、日本大学第三中学校(現在は第三高等学校)・野球部時代の藤田省三監督だった。
「藤田さんは『学生スポーツは人間形成の手段のひとつであり、野球は甲子園に行くためだけにあるのではない』という信念を持った“教育者”で、基本に忠実であるということと練習の積み重ねの大切さを学びました。
この藤田さんとのご縁が長い野球人生へ踏み出すきっかけとなり、その後私自身が、若い選手の育成に力を入れる結果にもつながったわけです」。
第2の出会いは、多摩川河川敷での練習時に「きみ、素質があるよ」と声をかけてきた伝説の大投手・沢村栄治さんだった。
その言葉に勇気づけられ進学した法政大学で関根さんはエースとして41勝の成績を上げ、ちょうど新設された近鉄へプロとして入団した。
「実は、あの頃はプロになろうという気はなかったんですよ。
プロ野球はまだまだ歴史が浅く、東京六大学野球が人気の中心でしたから」と、往時を振り返る。
だがまた奇遇なことに、近鉄の初代監督に就任した藤田監督からお声がかかり、思いもかけないプロへの道が開けたのだ。
その後投手から野手に転向し、現役最後を巨人で飾った後、ニッポン放送のラジオ解説者となった。
やがて念願のコーチとして広島カープに入団。さらにミスター長島の招聘で巨人のヘッドコーチも勤め、太洋、ヤクルトの監督として平成元年まで若手の育成と指導に心血を注いだ。
関根さんによると、監督には、
(1)土台(基礎)作り型
(2)中堅選手育成型
(3)優勝を狙う勝負型、があるという。
「私の場合、本質はコーチだと思っていますから、優勝よりも優勝するための土台作り型監督であったし、選手育成自体に喜びを感じていましたね」。

◎陰の努力が優れた選手を作る

練習量は昔の方が多く、その点今の科学的トレーニングの方が心臓への負担が軽いが、現在は統一メニューを作る模索期にあるそうだ。
だが関根さんは、「私は“正しく激しくやれ”というのが、トレーニングの原点だと思っています」と信念にあふれた答えを返してこられた。
「今の選手は練習量を減らしているし、食事内容の変化で骨が弱くなり、すぐ故障する。
しかし他人より余計練習するというのは自信へとつながりますから、自己流でなく毎日正しく練習した分だけ成果が出てくるんです。
選手の陰の努力は莫大で、“千日の行”といいまして、キャンプでやる練習などは氷山の一角。
それ以外に毎日飽きずにこつこつ練習する選手が結局実力を出してくるわけで、その見えない努力の中の精神的な苦しみの拠り所はやはり練習しかありません。
毎日毎日“行”を積んだのち、一瞬の技でゲームをする。そういう選手だけに大きな芽が出るんですよ」。
こうした誰も知らない、聞こえない部分の努力こそが真の努力で、それは“耳鳴り”のようなものだと関根さんは表現する。自分にさえ聞こえればいいのだ。
「だから一生懸命プレーしてる選手がミスをしても、不思議と腹は立ちませんね。
幸い私は生まれつき前向きな性格ですし、さらに野球人生を通して“焦るな、こだわるな”という人生観も得ました」。
現在関根さんは野球解説者として活躍中だが、日本の観客は子どもの頃から野球に親しんでいる人が多いのでレベルも高く、解説には気を抜けないという。
今年の予測については、「いろいろしがらみも多いし、それに巨人やダイエー、西武をはずしちゃうと怒られるんです(笑)。
日本ハムが面白いですよ、今年は」。
球場に来られないファンに自分自身の目と声を通して臨場感を伝えるのが使命という関根さんの名解説で、21世紀にふさわしいスター選手の活躍を大いに楽しみたいものである。