コシノ アヤコさん デザイナー

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1999年09月-月刊:介護ジャーナル掲載より(当時87歳)

「おしゃれは“健康の素”今を大事に楽しむ」

87歳にして現役のファッションデザイナー。
自ら日本のデザイナーの草分けとして活躍する一方、世界的なファッションデザイナーであるコシノヒロコ・ジュンコ・ミチコ3姉妹を女手ひとつで育て上げた。
1988年、76歳で『コシノアヤコ』ブランドを発表。
日本で昔から愛されてきたちりめん素材を研究。
おしゃれで着心地のいいシルバー向けファッションを提案している。

◎“ファッション好きやねん”洋服づくり一筋に70年

大正2年、『だんじり祭り』で有名な大阪府岸和田市に呉服商の長女として生まれたコシノさんは、世の中で洋装が珍しかった時代に、16歳で洋裁の道を志し、以来岸和田に店を構えて63年間にわたってオートクチュールの製作に携わってきた。
しかし若くして戦争未亡人となり、幼い3人の娘を女手ひとつで育て上げる日々は、決して楽ではなかった。
そのうえ「親娘揃ってお人好し」というコシノさんは「頼まれると嫌といえなく」て、他人のために金銭的に大きな痛手を被ったことも何度かあった。
「若い時はおしゃれをする暇もなく働く日々でしたね。お金に苦労し、人に苦労し、材料に苦労し。でも私は苦労は楽しむものやと思ってるんです。自分がどう思うかで苦労も苦労でなくなる。それに天職やと思ってる洋裁があったから頑張れたんです。娘が3人とも私と同じ道に進んだので同業者の友達から『うらやましいなぁ。一体あんたのとこ、どんな育て方したん?』ってよく聞かれるけど、私は親の後を継げなんていったことは一度もないんですよ。ただ仕事が好きやった。洋裁が好きやったんです。その姿を見てたんでょうね」。

◎『コシノアヤコ』ブランド誕生対象は体型変わる60歳以上

「娘たちからは、『お母ちゃん、76歳いうたら普通隠居する年やで。今まで散々苦労してきてんから、遊んだらええ。ブランド持つのはやめて』と反対されましたが、『ここでやめたら負けや』と意地になってやってしまいました」と屈託なく笑いながら語る。
娘さんたちの反対を押し切って始めた『コシノアヤコ』ブランドの対象は60歳以上。
年を取ると体型も変わる。
でもおしゃれをしたい女心はいくつになっても変わらない。
「おしゃれしようと思ったら服がいるでしょ。でも今の体型に合う着やすくておしゃれなものがないんですね。女性は男性より、体型の年代差が大きい。でも今の日本のデザイナーのほとんどは、若いスラッとした人たちを対象にしかデザインしていない。小柄で身体のあちこちにちょっとお肉の付いた高齢者を対象にしているデザイナーっていないんです。つまり60歳以上はファッションの対象外になってるんです。自分がそうなって初めてわかりました。それやったら自分が高齢者向けのおしゃれな服を作ったろう、と思ったんです」それは立体裁断で“肩の凝らない手を通しやすい服”という工夫が施されたもの。
そのためコシノさんは素材にもこだわる。
「ケンゾーさん(デザイナーの高田賢三さん。次女ジュンコさんの友人)が、時々パリから日本に来るのは、素材探しが目的なんですよ。それだけ日本にはちりめんなど昔からのいい素材があるんです。それやったらそんなものを活かして服を作りたいですよね」。
着心地がよくて優しいシルエットが、着る人の心までフワリと包み込むような印象のコシノさんの服。
デザイナーの人柄がにじみでているようだ。
「自分のブランドを作ってよかったことは、見本を着て自分もおしゃれができるということです。私、楽しくて仕方がないんです」ブランドを始める時、周囲に「20年頑張る」と宣言したコシノさん。
まだまだ作りたい服がたくさんあるという。

◎病気とも“仲良く”おつきあい“心のおしゃれ”も忘れずに

コシノさんは、高齢者の講演会によく呼ばれる。
おしゃれをして会場へ来た女性たちが互いの服装を褒め合っている様子などを見ると嬉しくなる。
「こういうおしゃれは、年を取らないと楽しめないというのがあるでしょ。だからその年に応じたおしゃれを楽しんでほしいですね。年を取ったら赤やらピンクやら派手なものを着たがる人がいますが、赤やピンクを年を取っても着られるのは白人です。色が白いから。日本人はだめです。肌の色を考えて、年を取ったら顔をきれいに見せる色の服を着てシックにしたほうが得です。白とかベージュとか。それから黄色人種の日本人には特に黒が合います。“女に喪服を着せる”という言葉があるでしょ。昔から日本の女の人をきれいに見せる色なんです。靴も服に合わせて茶とかシックな色のものを選ぶといいですね。後、なんといってもおしゃれには姿勢が大事。背筋をシャキッと伸ばしていないとせっかくのおしゃれも台なしになってしまう」。
いつもファッショナブルでパワフルなコシノさんだが、実は8年前にヘルペスを発症、以来、時々症状が重くなるとつらいことも。
しかし生来の楽天的性格から、病気とも“仲良く”つきあっている。
「病気も気にしない。病は気からというでしょ。元気でいる秘訣は、よく食べて、よく寝ることです。それから他人を喜ばせようとする“心のおしゃれ”も大切です。そうして年を取っていることを誇りに生きていきたいと思っています」。
ヒロコ・ジュンコ・ミチコ3姉妹の活躍を見るにつけ、“この母あってこの娘たちあり”と思わずにはいられない。