小田 実さん 小説家・評論家

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1997年06月-月刊:介護ジャーナル掲載より

公的援助なくして被災者の再建はないメチャクチャな政府にもの申す

1965年、自ら結成したベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)での活躍をはじめ、常に時代を語る論客として筆をふるってきた(当時64歳)。
このほど、第24回川端康成文学賞を受賞した。
阪神大震災では西宮市で被災。その体験をまとめた『被災の思想  難死の思想』を出版した。
大災害を通して見たこの国の悲惨な現状と、それを変えようとする努力を語ってもらった。

◎義援金だけではどうにもならない市民生活の再建

被災直後の2月、僕はまず『市民救援基金』運動を始めました。これは「行政のやることにはすき間があるから、市民が市民を助けよう」という主旨のもので、全国800人から3,000万円が集まりました。
必要なのは結局、お金です。お金なくして市民生活の再建はありえないのに、義援金は24万+10万円ぐらいのもので、これではどうにもならない。
要するに義援金だけに頼れない、市民生活の再建は公的援助なくしては不可能ということなんです。
これは私だけの意見ではなくて、震災から2年たって、兵庫県知事もボランティアの代表も同じ意見を新聞に発表しています。しかしこの国は、何もしない。
被災者の数が多すぎるとか、天災だから政治に責任はないなどというメチャクチャな論理を持ち出す。けれど、天災が引き起こした人災があります。天災を人災に変えないために、安全な生活を築くためにわれわれは税金を払ってきたのに…。
西ベルリンは、人口200万人に対して、1カ月分の食料とトイレットペーパーを用意しています。パリもニューヨークも同じ。それが文明国というものです。ところが西宮市(人口40万人)は、年間予算1540億円のうち、災害対策費はたったの4000万円です。

◎危機管理能力ゼロの国震災がなかったかのごとくの予算配分

ロサンゼルス地震の時アメリカは、最高で22,200ドルの援助を行っています。市民生活が大災害によって危機に陥ることは、国家の危機であるという受けとめ方をしているからです。
外国の新聞記者にも、日本は経済大国だから公的援助は当然あるでしょうといわれました。ゼロだと答えると、「人間の国か!?」と驚かれたものです。
阪神間にも、ずいぶん西洋人が多く住んでいましたが、「こんなひどい国だとは…」とびっくりして帰った人も多いんですよ。
行政は、自分では何もしないで、『ボランティア募集』なんていう。何ごとかと思いますね。
資本主義社会だから個人財産の保障はしないというけれど、実際は住専、その他でやってるじゃないですか。
財源をどうするかという人がいますが、そんなバカな話はないわけで、たとえばどこの家だって、一家の大黒柱に何かあれば、次の年の予算を変えますね。
関東大震災の翌年、政府は海軍の予算を10何%、内務省を24%減らしています。ところが今は、それをやらない。軍事費は同じ。明石海峡大橋や整備新幹線を、震災がなかったごとく造っているわけです。そして住専には6,750億円も出す。もう、メチャクチャな政府です。

◎超党派に呼びかけ市民側からの法案作り

こんなことじゃいけない、安心して住める国にするために法制度を作ろうと、昨年の5月から運動を始めました。市民議員立法と再建援助法です。
普通だったら法案を作って政党の偉い人に会うんですが、それはやめて、衆参両院の800人の議員に手紙を送り、賛同者を募りました。
最初は17人だったのが、今72人まで増えて、必要数は突破しました。
自民から共産まで、超党派の集まりです。何度も集会を開き、議員とやりとりして、クタクタになってここまできました。
主権在民だから、まず市民が法律を作って議員が練り上げ、通ったものを官僚が施行する、これが本来の姿なのに、この国は官僚が法律を作っている。
今、われわれがやろうとしていることは日本の歴史始まって以来の最初のケースじゃないですか。公的援助法案に賛同する議員は今107人いて、その人たちが公的援助法党を作っているわけです。
たとえば老人福祉の法案に対して100人の賛成者がいれば、その人たちで老人福祉党を作る。ひとりで2つの党に入っていいんです。これが本当の民主主義のあり方だと思います。
とにかく市民が立ち上がらなければ政治は変わらない。国民が考えて、自分で自分を変えなきゃダメ。
今後、私たちの法案がどうなるかわかりませんが、今、まさに正念場ですから、やるしかないんです。