日野原重明さん 聖路加国際病院院長

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1996年07月-月刊:介護ジャーナル掲載より

「文化国家の名に恥じない病院づくりを 商業主義で変則の医学教育じゃダメだ!」

日本で初めて病室の全個室化に取り組み、地下鉄サリン事件では、災害用に設けていた広いスペースが注目された東京の聖路加国際病院。「外国の病院に負けない水準をめざす」と話す院長の日野原重明さんは、心臓病の専門医で、人間ドックの草分けの一人として知られる人。現在の院長職は、ボランティアというから驚く。医療、看護の研究教育財団の新たな設立に東奔西走の毎日である。

◎外国人がバカにする日本の病院規制緩和も求める

「日本の病院を見て外国の人は、びっくりしますよ。プライバシーはないし、共同便所だし、長屋みたいだって言います。日本は、ホテルはいいけど病院はね…って。文化国家として半世紀は遅れてますね。アメリカもオール個室化になってきていますし」。こんな理由から踏み切った個室化だったが、差額ベッド代が520床の半分しか請求できず、財政面では大赤字。さ来年開業する予防医療センターの黒字分を補填することにしたという。
同病院の看護婦数は公立病院の2倍、医師の数は3倍で、「これがアメリカのレベル」と日野原さん。退院した患者への訪問看護などもやっていて、満足できる医療サービスは費用がかかるということか。
サリン事件では640人を受け入れ、10年前に設計した地震災害用の広いスペースが効力を発揮した。このアイデアは15年前に訪れたスウェーデンでもらったそうだ。「戦争や災害への対策を充分にとっていて、すばらしいと思いました」。
外国人が日本の病院をバカにするもうひとつの理由は、いい病院にヘリポートがないこと。「日本は法規制が厳しくて、近くに高いビルがあるとダメだとか、規則でがんじがらめになっていて、融通がきかないんです。震災の時も関西の病院にヘリポートがあれば問題なかった。水だって何だって運べるし」。ここでも規制緩和が求められている。

◎聴診器診断法の講義持つ基本大切にする医学教育を

日野原さんは、日本の医学教育にも疑問を投げかける。15年以上前から、日大と順天堂大で聴診器による診断法の講義を持っていて、開業医にも教えているという。
「聴診器で心臓病の異常の3分の2はわかるし、お金もかからないのに、素手でやることは収入にならないから、CTとかそんなことばっかりやってる。非常に変則で、基本を教えてないんです。そんな医学は邪道です。
医学校は何やってるのかと思いますよ。医学が商いになってる。使命感じゃなく、収入や社会的地位が目当てで医者になるのはまちがってる」。まったくそのとおりで、そんな医師が増えているのかと思うと背筋がゾッとする。

◎健康の秘訣は休まず働き少食、粗食に限る

日野原さんは毎朝7時半に病院に出勤し、診察、回診をこなす。いたってお元気である。「休まずにやっているからじゃないかな。やっているとできるんであって、やらないからできなくなる。だから、できる間はベストを尽くすけれど、できなくなったらペースを落とす。いつまでやれるのかはわかりません」。
注目は食事だ。朝食…コーヒー牛乳とジュース、きゅうりとにんじんを10センチ位ずつ。昼食…きちっと食べるのは週に一度で、缶コーヒーとクッキー程度。夕食…ごはん3分の2、魚ひと切れ、または脂肪の少ない肉150グラム、生野菜たくさん。アルコールは乾杯だけ、タバコは吸わない。1日1200カロリーは、いたって少食で粗食。
「贅沢食はコレステロールと糖分が多いから、質素にしてます。太らないように努力してますね」。医者の鑑のような先生である。