イーデス・ハンソンさん タレント

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1996年04月-月刊:介護ジャーナル掲載より

生き方のビジョンを持っていないと楽しい面白い老後は望めん、なぁー

◎もう、在日35年とか…。

その間、これほど活躍し続けた外国人タレントを他に知らない。
もちろん、そこには、彼女の明るいキャラクター、良質のユーモアに満ちた話術、インド生まれのアメリカ育ちという特異な経歴、ベストセラー小説まで書いてしまう多才ぶり、日本の伝統文化、風俗習慣への造詣が見逃せないだろう。
しかし、なによりも、人間への優しさが込められていたからのように思えてならない。
そして、和歌山の山村に、つれあいと移住して10年…。
よほど山村の生活が肌に合うと見えて、マスコミに登場することは少なくなった。
だが、ますます意気軒昂、物事の本質を鋭く見抜いた発言は健在だ。(当時57歳)

◎人権は人に守ってもらうのではなく自分の責任

『人権』ってなんだろうか…と深く考えることのなかった日本人も数々の冤罪事件、民族紛争、天安門事件、アウン・スー・チーさんの自宅軟禁事件などを前にして、ひとりの地球人として門外漢でいるわけにはいかない。まして、日本は一民族国家だから人権問題はない、などと傲慢でいていいはずはない。
「人権なんて考えなくてすむ社会が一番いいんや。でも現実に人権侵害はあるし、消えない。特別珍しいものでなく、事故のように、いつ自分や自分の大事な人が巻き込まれるか分からないものなんです。事故なら人為的なものとは限らないけど、人権侵害は人が意識的にやっていること。だったら、人間が止めさせることができるはずだと、思うんよ」そういった思いで、世界的な人権擁護団体アムネスティ・インターナショナル日本支部支部長に就任して10年、精力的に活動している。もちろん報酬はない。
「人権は人に守ってもらうものではなく、自分の責任でもあるわけでしょう。平和に暮らしたかったら平和な状態を保つ。当たり前のことです」。
難しい話をさらに難しく話す人は多い。それをありがたがる人も多い。それだけに難しい話でも易しく話す人は貴重だ。ハンソンさんは、まさにそういう人。しかも言行一致。だから迫力も説得力も人一倍。歯に衣着せずシンプルにおかしいことは「おかしい」と言う。言いっ放しではなく闘う。

◎相手の立場を理解し思いやらなければ国際化は無理

日本の国際化の問題も人権の視点を無視できない、と言う。
「それぞれの国で文化、習慣が違います。まず、その違いを認めなければ。相手の立場を理解して、思いやらなければ国際化なんてできないでしょう。自分の感覚と他人の感覚は違うのだから…自分の価値観が絶対じゃないのだから…常に『もしも私が相手の立場だったら…』という想像力を持つ。そういう余裕を習慣とすればいいんじゃない」。
地球に優しい暮らしを実践していらっしゃるとのこと、『不便ではありませんか』の不届きな質問に…「問題は何を便利と言うかやね。ペットボトルの容器をドンドン捨てる、ゴミを分別しない、油を流しに捨てる…それが便利なん?便利とか不便とかいう考え自体、あまりに自己中心的だと思うわ。もちろん、暮らしているということは、それだけで地球に影響を与えているわけだけど、なるべく影響を与えないように暮らしたい、と思ってます。地球が提供している空気や水をできるだけ良い状態に保つ作業は難しいもんじゃない。家は掃除するでしょう、畳に空き缶を捨てないでしょう。それと同じこと」便利さとか豊かさを勘違いして、それと引き替えに大切なものを失いつつある。

◎自分に価値あることをしているから、楽しいねん

1986年、文化から政治までを俎上に辛口コメント、テレビのみならず執筆でも大活躍だったハンソンさんは東京を去る。どのような人生設計を描いて、いわゆる働き盛りの年齢で紀伊山地の山村に移住したのだろうか。
「住みたいところに来て、トコトン楽しんでます。だから良かったよ。もともと、私は小さい頃から、外からの刺激がないと寂しいってことがない。受身じゃなくひとりで遊べるタイプ。和歌山には、したいことが一杯ある。家族のために働くこととか人生には『せざるを得ないこと』があるけど、そういうことだけが人間のすることじゃないでしょう。やっていて面白い、自分にとって値打ちがあることだったら、世間からどう思われようが、かまへん。これをしなくちゃ格好悪いとか、周りの人が評価してくれるからやるとか…そんなん楽しいか?
えぇ格好することないやんか。自分の人生やんか」魚も野菜も良し、自然も良い。東京での仕事が終わると一目散に帰る。そして地元のおばちゃんの「おかえり」を聞くとホッとするそうだ。和歌山生活「楽しい!」の言は伊達ではないようだ。
「高齢化、高齢化と暗い側面ばかりが取り沙汰されてるけど、どの部分を見るかで、全く違ってくる。高齢者の面倒をきちんとみる、ということでは見通し暗い。税金を出す人は減る一方だものね。でも、楽しく面白く年をとるということは、自分でできる。意識の問題だから。よく、愛される年寄りになりたいと言う人がいる。でもね、若い頃、中年の頃から愛されてなければ、無理。若いうちから自分の老後の姿を作っているんです。老後の姿が決まるんです。自分の生活の在り方、考え方、生き方のビジョンを持っていないと楽しい面白い老後は望めん、なぁー」