加山雄三さん 俳優

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1994年07月-月刊:介護ジャーナル掲載より

家庭の幸せなくして理想の老後はありません

1960年代の青春を彩った“若大将”は、今年57歳(1994年当時)です。「あと3年で還暦ですから、すでに老後に片足を突っ込んでいると思ってるんです」と、ショッキング発言。若々しい風貌とイメージから、老後はまだまだ先のこととして描いていらっしゃると、当方は勝手に思い込んでいたのだ。が、インタビューが進むにつれ、幾多の人生の山坂を、逃げることなく足踏みしめて歩んできた加山さんだからこそ、今、57歳という一般的なリタイア年齢にさしかかり、老後がすぐそこにあると現実的にとらえての発言と理解しました。

理想的老後は、夫婦の絆から

「理想の老後を送るには、まず、経済的な安定。そしてもうひとつ、大きな問題は、心の支え、つまり人との絆というものが必要ですよね」その心を支えるはずの夫婦の、そのあり方は、豊かさ故に生まれたエゴイズで喜ばしくないものに陥っていると嘆く。「夫婦というのは、船の航海と同じようなもので、出発点でたった5度の開きであっても、長い航海の間に、どんどん離れていって、しまいには、水平線のかなた、お互いに見えないところに行ってしまうほどになる。ささいなことの積み重ねで、離れていってしまうんです。努力し続けないと夫婦はまっとうできない。それだけの苦しみを人間は性として与えられているんじゃないかと思いますね」夫婦の基本的あり方は、男と女はそれぞれの役割がある、それを尊重し、尊敬し合い、相手は自分の持ってないものを持っているから、大切な人だという気持ちを芯から持つことで丸く収まるという。

出演基準は、親子で見られる番組

多額の負積を背負わなければならなくなった逆境時に結ばれた夫人とは、二男二女に恵まれ、絆を強め端目に理想的とも思える家庭を築きあげている。「子供の教育は、親の責任ですよ。このごろ、年寄りにいたわりの心を持てない若い子がふえているでしょ。こわいことです。子供を教育するのは、ああしろ、こうしろと口でいうよりも、そうせざるを得ない環境を作ってやることが本当の教育だと思うね。そうしてやって、まずいなという芽が伸びてきたらつんで、いい芽は伸ばす。子供は、親の背を見て育つという通り、親のやったことをやるし、親のやだなあと思うことをやりますよ」夫婦、親子のつながりをなによりも大切にする加山さんのテレビ番組などへの出演基準は、わが子と一緒に見て恥ずかしくないもの。「裸で抱き合う濃厚なラブシーンやキスシーンには、一切出ていません。いい悪いじゃなく、親子で見ていて、赤面したり、嫌だなあと思うことはやる必要はない。それをやらなくても、仕事はできるんですから」

読書大好き。意外な特技は料理

ヨットにスキーにと、スポーツ万能であることは、よく知られているが、意外な特技が料理。「朝だろうと、昼だろうと暇さえあれば家族の食事を作ってます。片づけは女房が当然やります」クライアントを自宅に招いて、中国料理でもてなしたりもする。フランス料理もレパートリー。若いころ、ヨットで水上生活者のようなことをしていたから、必要に迫られて身につけたという。読書も大好き。それも、物理学、心理学といった、学問的分野の本を読む。中でも天体物理への関心が深く、そういう世界からみると、人間の生きていることそのもの、存在そのものが、実に奇妙だと考えたりすることがあるという。奥さんとは、夫婦や老後をテーマに、よく話し合う。2人で考える自らの老後像とは—「奇妙な表現ですが、若い老人夫婦というか、若々しくて、素直な老人夫婦というのを我々は目指そうということです」昭和12年生まれの同級生は、社会的にまだまだ、活躍している。政治家の橋本龍太郎氏、キャスターの木村太郎氏…。戦前、戦中、戦後を生きてきて強いのだという。永遠の“若大将”の活躍を見つづけたい。※写真は、特技の料理をテレビ番組で披露する加山さん